2021年2月13日の夜11頃、福島県沖を震源とする地震が発生し、東北新幹線は全線再開まで10日前後運休することとなってしまいました。(JR東日本公式サイトより)そのような状況下で、JR東日本がとった行動が称賛されているので、ご紹介したいと思います。
特急ひたちとは
まず、特急ひたちとはどのような列車なのかをご紹介したいと思います。特急ひたちは常磐線経由で運行され、首都圏と水戸・いわき・仙台の各都市を結ぶ列車です。毎時00分に上野駅を出発し、いわきや仙台に向かうダイヤ構成となっており、1日あたり3本が仙台まで直通運転されます。
2011年に起きた、東日本大震災の影響で、常磐線の一部区間が損傷を受けるなどしたため、長らく首都圏から仙台までの直通運転は行われてきませんでしたが、2020年3月のダイヤ改正により、常磐線の不通区間が復旧され、運転が再開されたため上述の通り1日3往復が仙台まで直通運転されることとなりました。
JR東日本がとった対応
さて、JR東日本がとった対応をご紹介します。それは、特急ひたちの一部列車の運転区間を延長し、いわき~仙台の間を臨時快速として運行するというもので、いわき発品川行の8号、22号と品川発いわき行きの9号、25号がこれに該当します。これにより、東北新幹線が不通の間の首都圏から仙台への移動の代替手段がとられることとなりました。
JR北海道にも生かせる教訓
今回のこの出来事は、将来的に北海道新幹線が開通した際にも生かせるのではないでしょうか。現在、北海道新幹線の札幌延伸開業後の特急北斗の去就は発表されていませんが、長万部までの運転区間の短縮や、列車自体の廃止を取りざたする声もあります。また、函館本線の函館~小樽間は第三セクター化されることが決定していますが、長万部~函館の間を第三セクター化してしまうと、札幌から函館まで室蘭本線経由で特急を直通運転する際の妨げになってしまいます。
また、北海道新幹線が札幌まで開通しても、札幌~函館間を直通運転する列車を平時から運行することは重要だと感じます。理由としては、1つ目に函館駅まで乗り換えなしで行くことが可能だということです。札幌から函館に向かう際に新函館北斗駅で乗り換えを行わないというのは魅力的だと考えます。特に、新千歳空港駅のスルー化(千歳線の本線上に新千歳空港駅を設置すること)工事が完成すれば、海外から飛行機を乗り継いで北海道にやってきた観光客が列車1本で函館に行くことが可能なのは魅力的です。
2つ目に北海道新幹線の運行頻度の問題です。現在の特急北斗と同程度を確保するのであれば、1時間に1本は新函館北斗駅に停車する必要性があります。北海道新幹線の札幌延伸開業後の停車駅については、さまざまな予想がなされていますが、「最速達列車が1県につき1駅のみ停車する」という原則があるため、新函館北斗駅に停車しないのではないかという予想もあります。そうなると、1時間に1本運行されなくなってしまう可能性もあります。また、「札幌~新函館北斗までの道内完結列車を運行する」という案もありますが、道内の各駅に停車しても、需要がそれほど見込めないのではないかと感じます。理由としては、現在の特急北斗は需要の高い、千歳線、室蘭本線経由のいわゆる「海線」を走行していますが、新幹線はあまり需要が高くない函館本線の小樽~長万部側のいわゆる「山線」に近いルートで運行されるため、1時間に1本運行するほどの需要が生まれない可能性があります。
まとめ
上記のように考えると、今回のJR東日本が行った、災害の際の臨時列車として交通網を維持することは大切です。また、北海道新幹線が札幌まで開通しても、平時から函館までの直通運転する特急を維持することは意外にもコストに見合ったことだと感じます。特に、函館~長万部の間は、新幹線開業後に経営分離されるとは言っても、貨物列車が運行される、北海道の物流の大動脈であるため、よっぽどのことが起きない限り、路線は存続させることになります。そのため、特急北斗の函館駅乗り入れを継続することはそこまで難しいことではないと感じます。
また、ここで北海道新幹線の札幌開業後の特急北斗の函館乗り入れの障害となる、第三セクターについて考えてみたいと思います。函館~小樽の間を1つの会社に譲渡して運営を行ってもらう場合には、函館~長万部が第三セクター化してしまうのは、譲渡後の運営会社の経営上致し方ないと考えます。理由としては、特に函館本線の長万部~倶知安の間の経営が厳しくなることが予想されているためです。しかし、もし仮に函館~長万部間と長万部~小樽間をそれぞれ、別会社として運営させることを考えているのであれば、そもそも函館~長万部の間はJR北海道による運行を継続することが望ましいと感じます。そうすれば、特急北斗の函館駅乗り入れの継続を実現しやすくなります。