札幌市が出している「丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書」というものをご存じでしょうか?まあ、皆さんご存じないと思います。そもそも丘珠空港自体を知らない人も多いと思います。そこで今回は丘珠空港に関する説明から報告書の内容やそれに関する考察まで詳しく書いていこうと思います。
丘珠空港とは
そもそも丘珠空港が何かわからない人のために丘珠空港をご紹介します。丘珠空港の正式名称は札幌飛行場といい、1942年に陸軍航空隊によって設置されました。アメリカ軍による接収を経て1952年に返還され、1954年に自衛隊の北部方面航空隊が札幌駐屯地から移駐しました。その後、1961年に自衛隊と民間の共用飛行場となりました。
滑走路長は設置当初は1,000m、1967年に1,400mになり、2004年に1,500mに延長されて現在に至ります。かつてはJJ統合でJALに統合されたJASの前身である東亜国内航空やANA系列の会社であったエアーニッポンネットワークが就航していましたが、現在は北海道エアシステムが通年運航、フジドリームエアラインズが夏季限定運行で就航しています。
フジドリームエアラインズが夏季限定運行なのは使用機材である、エンブラエルのE170やE175型機が離着陸する際に、冬季は滑走路の積雪などで丘珠空港の滑走路長では安全な離着陸に不安が残るためです。
丘珠空港からの路線
丘珠空港は上述のように北海道エアシステムとフジドリームエアラインズが就航しています。路線網は道内路線が中心で、一部道外路線にも就航しています。
運行会社 | 行先 |
北海道エアシステム | 函館、釧路、利尻、三沢(八戸) |
フジドリームエアラインズ | 松本、静岡(どちらも夏季限定運行) |
丘珠空港からの就航先は上記のようになっています。ほかにもチャーター便が運行されることがあります。かつては中標津、稚内、女満別、オホーツク紋別、仙台、東京などの空港にも運行されていましたが、ANAの新千歳空港への移転や各航空会社のジェット化によって廃止になりました。
現在の運航便数は函館6往復、釧路4往復、利尻1往復、三沢(八戸)1往復、松本1往復、静岡1往復の計14往復が運行されています。また、フジドリームエアラインズのチャーター便によって愛知県の小牧空港への便なども運行されることがあります。
報告書の概要
報告書では現在の丘珠空港の利用状況などをもとに通常時の運用の在り方に加え、防災や医療などの面から滑走路の延長や空港へのアクセス改善などについての議論すべき事柄が書かれています。この報告書はあくまでも、市民や有識者など幅広い人々が議論をすることができるように製作されたもので、丘珠空港の将来の在り方を決めるものではないようです。
特に、滑走路の延長について重点を置いて書かれており、これからの丘珠空港の活用において重要な議題になってきそうです。札幌市が提案する滑走路の延長は300m延長して1,800mにする案と、500m延長して2,000mにする案があります。このうち、1,800mにする案は滑走路を北西方向と南西方向に分散して延長すれば大規模な支障物件移転は発生しないそうです。
また、空港のアクセス改善については新交通システムや地下鉄の延伸には多大な費用を要するとしてあまり札幌市は乗り気ではないようです。
丘珠空港の滑走路延長についての考察
ここからは筆者の意見を交えて考察をしていきます。
滑走路延長について
まず今後の考察をしていく上で一番重要なのは滑走路の延長です。報告書によれば、滑走路を300m延長して1,800mにする場合は大規模な建物の移転は発生しない見込みですが、延長による効果はかなりのものなようです。
例えば、フジドリームエアラインズが使用する、エンブラエル170型は通年で就航できるようになります。また、同じくエンブラエル175型は冬季は重量制限をすることで通年で就航できるようになります。そして、その他のリージョナルジェットも安定して就航できるようになります。
また、1,800mに延長するだけで医療用のメディカルウイングも安定して運行することができます。他にも災害時の対応への活用も見込まれます。
しかし、2,000mまで滑走路を延長すると、大規模な物件の移転が発生します。また、2,000mに延長をしてもボーイング737やエアバスA320は安定した就航を行うことができないので延長の効果は薄いと考えられます。また、大規模な物件の移転を伴うため、時間や金額の面でかなりの労力を伴うと考えられます。
上記のことを勘案すると、「3,00m延長して1,800mにする」という案が丘珠空港の周辺環境などを考慮すると最も現実的であり、費用対効果も高いと考えられます。それを前提としてこの後の話を進めていきます。
今後の路線展開について
現在の1,500mの滑走路では路線網の拡大は望めないでしょう。なぜなら、夏季は運行できる機材が冬季は積雪のため運行不能になり、安定した就航をすることができないからです。そのため、上記の考察の通り、滑走路が1,800mになったと仮定して話を進めていきます。
1,800mになった場合、上記のエンブラエルは安定して就航することができますし、「エアバスA220」という名称のリージョナルジェットも安定した運行をすることができます。
エアバスA220とは
エアバスA220を知らない人のために説明をすると、最初はボンバルディア社が「CS100」と「CS300」の2種類を発売し、ボンバルディア社がエアバス社に買収されたために、この機体の名称はそれぞれ「エアバスA220-100」(以下100型と表記)と「エアバスA220-300」(以下300型と表記)に変更となりました。リージョナルジェットという扱いですが、100型は110人乗り、300型は130人乗りとリージョナルジェットの中では多い部類となっています。
また、通常の300型は1,800mに滑走路を延長した場合でも離着陸できませんが、300型には離着陸性能強化版の300XTという型があり、この機体ならばカタログ性能では1,661mで離陸することが可能です。また、この機体は4,000m程度の航続距離があります。
しかし、海外の大韓航空やスイスインターナショナルエアラインズでの採用実績はあっても、日本の航空会社で採用していないので、整備の面で課題が残ります。
話を本題に戻します。100人越えの人数が登場することができるリージョナルジェットを就航させることができれば、路線網を大幅に増やすことができます。例えばドル箱路線で各社が一番就航させたいであろう、札幌-羽田線にも発着枠さえあれば就航できます。
また、4,000mの航続距離がある機体を就航させれば、沖縄にも就航することができ、日本全国をカバーすることができます。
ただし、環境基準などを考慮すると、エンブラエルの機体などのリージョナルジェットは着陸12便と離陸12便の計24便しか就航することができないので、就航する路線は吟味する必要がありそうです。
空港アクセスの改善について
丘珠空港の弱点としてアクセスが悪いことが挙げられます。最寄り駅の「札幌市営地下鉄東豊線の栄町駅」からは徒歩15分程度かかります。もしくは駅から有料の空港連絡バスに乗る必要があります。また、札幌駅からもアクセスバスがありますが、冬季は道路が混雑するため運行されていません。
空港アクセス改善のために、都市モノレールの建設や、都市型ロープウェイといった案を札幌市は出していますが、個人的にはこの案に反対します。その理由を説明します。
私が反対する理由は札幌市空港のアクセスありきで計画を練っている点です。当たり前ですが、空港のアクセスという目的だけで建設すると、空港利用者の利用しか見込めず、その路線の発展の可能性をつぶすことになります。どうせ路線を引くのであれば、栄町駅から出発して空港を通り、その先の丘珠高校やモエレ沼公園などにも線路をのばし、通勤や通学、観光にも使用することができる路線を造ることが大切です。そうすれば、多少は収益の面で空港アクセスのみの場合よりも改善が見込めると思います。
もう一つ私が反対する理由はモノレールやロープウェイで計画をすすめている点です。モノレールやロープウェイの場合、新しく高架路線を建設したりするので膨大なお金がかかり、これが建設のネックになっています。
そこで、私は市電を建設することを提唱します。市電は既存の道路に線路を敷設するため、モノレールほど莫大な費用は掛からないと予想します。また、札幌市は市電を保有しているため、整備のノウハウも有しており、新型の車両の導入で余剰になっている車両も一部あると考えられます。その技術などを流用すれば効果的に市電の運用を行うことができます。
まとめ
まず、丘珠空港に不可欠なのは滑走路を延長して1,800mにすることです。そして、それが実現されたのち、札幌市や道が丘珠空港を拠点とする航空会社「北海道エアシステム(HAC)」にリージョナルジェットを購入するための代金の一部補助などをおこなって道外路線の展開などをしてもらうようにすべきだと考えます。
また、空港アクセスの改善として市電を設置し、栄町駅から空港を経由して丘珠高校やモエレ沼公園などにも至る路線を設置すべきと考えます。また、それを機に現行の市電を延伸し、駅前通りから札幌駅を経由して栄町駅に至りそこから空港へ向かう路線としてもいいと思います。
続編として札幌市への意見を書いているので、ぜひそちらも参考にしてください。https://tabi-plus.com/archives/1329